先輩社員に訊く 建装事業<デザイン・設計>
当社にご依頼いただく設計の多くは、実施設計と呼ばれるものです。「こんなふうにしたい」とイメージを膨らませていく基本設計は学生時代にも習いますが、実施設計ではそれを実現可能な形にしていかなければなりません。例えば、ホテルやオフィスの設計を依頼された時、お客さまは使い勝手や機能面、オペレーションのしやすさなどを考慮しながら要望を出されますし、デザイナーさんはお客さまの声をもとにコンセプトを作り、イメージを膨らませます。でも、それを実際に作ろうとすると、できることとにも限度があり、実現できないことも出てくるのです。そこで、お客さまやデザイナーさんの意図をよく咀嚼し理解した上で、きちんと実現化できるように変換していく実施設計が必要になってきます。言ってみれば、私たちの仕事は、「作りたい図面」を「作れる図面」として形にする、翻訳作業のようなものだと思っています。
先輩に仕事を教えていただいている時、「こんなに手厚く仕事をするの?」と感じたことがありました。ただ、後になってお客さまが「ここまでしてくれるんだよね」と話されるのを聞き、これが当社の先輩方の培ってきた信頼関係なのだと心打たれました。私もお客さまの期待にお応えしていけるよう、こうしたほうがいいと思いついたことを泥臭くやっていこうという気持ちで仕事に臨んでいます。
また、自分の経験値を上げていくことは、次の仕事の糧にもなります。当社の場合、依頼される案件が全てオーダーメイドのため、同じものを繰り返し作ることがありません。経験したことを知恵として、常に新たな課題に取り組んでいくことになるわけです。仕事では自分の経験から判断が求められる場面も多いですから、様々な経験をして良い・悪いという物差しをたくさん備えていくことで、さらに成長できるのだと思っています。
例えば机を作る時に、「とりあえず机を作ってみよう」と始めるわけではありません。私たちの仕事は、作り始める時点で「質の高い机ができる」という完成形が見えていて、その実現に向けてしっかり準備を整え、取り組んでいくものだと思っています。つまり、「結果オーライ」ではなく、明確なゴールに向かって作業を進めるというイメージです。三越伊勢丹グループとして、「お客さまの要望に沿った良いものをきちんとお届けする」という姿勢、あるいは行動。私は、「納める」という言葉を、そんなふうに解釈して使っています。
プロフィール
美大時代から非日常の空間づくりに興味があり、入社説明会に参加。「目で見て触ってというのがいちばんの勉強かなと思うんです。歴史ある自社工場を守り続けているスタンスに惹かれました」と当時を振り返る。入社後は生産管理・積算見積りを2年経験し、今の部署に。主にホテルの内装の設計を手がけている。