2024.12.26
家具
家具製作
物件名 荻外荘(てきがいそう)
所在地 東京都杉並区荻窪2丁目43番36号
施工 株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザイン
竣工 2024年10月
杉並区が進める「国指定史跡荻外荘(近衞文麿旧宅)復原・整備プロジェクト」において、株式会社竹中工務店から依頼を受け、区の指導を受けながら当社は昭和2年頃の古写真を元に、実物が残っていない家具17アイテム36点の推定復原を担当いたしました。
東京都杉並区荻窪は、大正から昭和初期にかけて「西の鎌倉・東の荻窪」と称され、東京近郊の別荘地として文化人・政治家の人気を集める住宅街となりました。日本における建築史学の開拓をおこなった人物として知られる、伊東忠太(いとうちゅうた)によって昭和2年(1927年)に荻窪に創建された「荻外荘」は、東京帝国大学医科大学教授(現 東京大学医学部)や宮内省侍医頭などを歴任した入澤達吉(いりさわたつきち)の荻窪別邸として建てられます。後に、内閣総理大臣を3度務める政治家・近衞文麿(このえふみまろ)に譲渡され、昭和前期の政治の転換点となる重要な会議が数多く行われました。
平成28年(2016年)には、日本政治史上、重要な場所として、「荻外荘」は国の史跡に指定されました。杉並区の「荻外荘」の保存を目的とした本プロジェクトにおいて、当社は歴史的な会議が行われた客間や応接室、食堂などの家具を、古写真を参考に設計担当が図面を作成し、三越製作所(自社家具工場)の製造担当の職人の知見を活かしながら、文様や家具のサイズ感など当時の雰囲気を再現するために尽力しました。
復原は新規の家具製作業務とは別の目線が必要で、古写真から漠然と再現するのではなく、歴史的背景から根拠をもって推定復原を行う難しさがあります。螺鈿一つとっても、国や時代によって文様や装飾量などが異なるため、図書館やインターネットなどの史資料を参考に分析し、現存する建具サイズとの比率から整合性を高めるなど、考察を重ねて作図しています。現在手に入らない材料などは現代技法でどのように表現するか、外部の設計監督者とも協議し、製作過程においても職人と相談をしながら、より古写真に近づくよう試行錯誤し復原しました。
応接室:正方形テーブル(螺鈿)、チェア(螺鈿)、コンソールテーブル
客間:テーブル(3種)、一人掛けソファ(2種)、椅子、飾り台、キャビネット
食堂:ダイニングテーブル、ダイニングチェア、チェスト、キャビネット
広縁(ひろえん):八角形テーブル、一人掛けアームチェア
■杉並区「荻外荘 復原・整備プロジェクト」
荻外荘は、令和6年(2024年)12月9日(月)より一般観覧を開始しています。詳しくは杉並区のホームページをご覧ください。
https://www.city.suginami.tokyo.jp/shisetsu/kouen/02/ogikubo/1054100.html
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