2023.07.18
家具
家具製作
特注家具名 ishidansu / nendo
製造 2022年
『植治』小川治兵衛の代々が庭園に向き合って250余年。
「庭園の魅力を屋外空間に限定することなく屋内に取り入れたい」という考えのもと、植治 次期十二代 小川勝章氏によって選ばれた、特別な3つの石でnendo様と三越製作所とで新たな作品を製作いたしました。
二条城・二の丸御殿台所および御清所にて展示され、現在一部の作品は海外含めさまざまな地へ展示を巡っています。
素のままの石を使うと屋内空間と乖離することから、「屋内らしさ」を添えるために、一般的に内装材として使用される木材と石の一部を部分的に切り替え、さらに家具的要素としての小さな引出しを設えることで、屋内空間との親和性を高めています。
京都府や高知県から選定された、それぞれの表情を持つ3つの石を、三越製作所にて3Dスキャンし、そのデータを元に切削加工機で荒彫りし、彫刻職人の手彫りにより石の表面の微細な凹凸まで完全に再現しました。
一方、石の切り出しに関しても、割れや欠けが生じると全工程をはじめからやり直す必要があることから、細心の注意が払われました。最後に引出し部分を加工し、石と木とともに一体化されました。
このようにして生まれた3つの石は、石を主体として鑑賞する「盆石」(盆の上で庭園を表現する伝統芸術のひとつ)とも異なる、「室内そのものを庭園化するための石」としてデザインされたものとなりました。
製造を担当したTさんのコメント
「石を木で表現するお話をいただいた時は驚きと、製作物として『おもしろそう』という思いと同時に従来とは異なる技法で製作しないと、形に出来ないと感じました。そこでまず、作品のコンセプト『庭園の要素を屋内空間に取り込む』『庭石を家具に見立てる』を解釈する為、石の全体の佇まい、質感、陰影などじっくりと観察しました。次に、どうしたら木が石に近づける事が出来るか、リアリティを追及する為、どのような木材が適しているのか、材種の違う5種類に絞り試作。その中で最適な(木材の収縮、加工精度等)材料を選択しました。
製作する上で困難であったのが、自然物であるがゆえ石には様々動きがあり、見る角度、距離感によっては見え方が変化することや、彫り進めると細部がうまく表現できない事、また3個の石質が異なり、複雑で規則性が無く表面のうねりや荒々しさを捉える事に、時間を要する事などです。彫刻刀やノミでは表現出来ない細部は、歯科技工士が使うリューターを使って質感を表現しました。
石の切断からNC加工、異なる素材の接着、抽斗の加工精度、それぞれの工程に緊張感があり、通常の家具製作とはまた違った、新しい発見と木工の可能性を広げられる経験になりました。京都の二条城での展示により様々な人の目に触れる事によって『三越製作所』の技術力の発信に繋げられたと思います。
今後も、伝統技術を活かしデジタル技術と新しい発想を取り入れ、人が驚くようなものづくりに励んでまいります。」
Photographer:Hiroshi Iwasaki
movie:YouTube @nendo_official
「ishidansu」
https://www.youtube.com/watch?v=-h_YlRucbf0
「NENDO SEES KYOTO full ver.」
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